料理には「切る」という作業がつきものだ。

ざくざく切ったり、トントン切ったり、時にぐにゅっと切ったりする。
私も今までさんざん切ってきた。

「食べやすい大きさに」とか「食感が殘るくらいに」とか曖昧な言葉に疑いも持たず、ひたすら切ってきた。

しかし、あるとき思った。

 

 

レシピに書いてある「切る」という言葉を全て無視したらどんな料理ができるのか

気になる。やってみよう。

 

今回5種類の定番料理を、具材を切らずに作り…

どんな料理ができるのか検証する。さらに、おいしい順にランキングを作りたいと思う。

 

それではいきます。

 

1/5 麻婆豆腐

はじめに挑戦するのは麻婆豆腐
豆腐とひき肉がタレに絡んでおいしい料理。具材を切らないとどうなるのだろう。

作る過程をレシピ形式でご紹介します。

 

1.フライパンを火にかけ、適量の油をなじませる。

 

2.豆腐を一口大の大きさに切らずに入れる。

 

3.ひき肉を加えて混ぜない。

通常、ひき肉はバラバラにくずしながら炒めるが、これは広い意味では「切る」に當たると判斷した。

 

4.色が変わるまで中火で炒める。

豆腐ハンバーグの趣旨を理解してない人みたいだ。

 

5.ネギを細かく刻まずに加える。

 

6.タレを加えて中火で3分ほど煮込む。

完成が見えてきた。本來なら具材が混ざり合って和気あいあいとし出す頃だ。
それなのに互いに干渉せず、全員がツンとしてる。さみしい。

 

7.煮立ったら皿に盛りつけて完成。

想像以上に麻婆豆腐っぽさがない。
「なんか四角くてでっかいものが添えてあるデミグラスハンバーグ」という感じだ。

 

比べてみよう。
あきらかに出自が違う。洋食っぽい。

 

少しでも中華に近づけるため、家で一番中華っぽい皿にうつした。
やはり麻婆豆腐には遠い。

味の感想はのちほど。

2/5? やきとり

つづいてはやきとり。鶏肉を細かく切って串に刺して焼いた料理だ。そこから「切る」を抜くとつまり、肉を刺して焼くだけの料理。

どうなる…?

 

1.鶏肉を食べやすい大きさに切らない。

今回は胸肉を使用。

 

2.串に刺す。

皮がついていたので、急遽とり串も作ることに。

 

3.コンロで両面を焼く。

 

~10分後~

 

4.タレをかけて完成。

でかい。
こういう料理としてありそうだが、居酒屋でサラリーマンがこれを食べている姿は想像しづらい。
これは焚き火を囲んであぐらで食べるタイプのものだ。

 

どんどん行こう。

3/5? ミートソーススパゲティ

次はミートソーススパゲティ。そもそもペースト狀のものを切らずに作ることはできるのか。

 

1.玉ねぎをみじん切りせずに下茹でする。

 

2.トマトを切らずにゆでる。

 

3.フライパンに油をなじませ、ひき肉を加える。

 

4.みじん切りにしていない玉ねぎと、カットしていないトマトを加え、ひき肉とまぜない。

ひき肉をホルダーにすることで、玉ねぎとトマトを無理やり一體化させた。

 

5.弱火で5分ほど蒸し焼きにする。

この間にスパゲティの用意をしておこう。

 

6.茹でたスパゲティを皿に盛る。

 

7.その上にミートソースをかけて完成。

固形になった。
「ミートソースくらい手作りしろよ」みたいなことを言ってくる旦那にはこれを出そう。

 

それでは次に行きます。

4/5? 味噌汁

つづいて味噌汁。忙しい朝に野菜を切ってる時間はない。切らなくてしかもおいしいとあれば一石二鳥だ。

 

1.だし汁を火にかける。

 

2.豆腐と大根とネギを適當な大きさに切らずに加える。

 

3.油揚げを好みの大きさに切らずに加える。

 

4.ひと煮立ちさせる。

 

5.味噌を加える。

 

6.椀に盛りつけて完成。

なんだろう、この堂々とした佇まい。普通の味噌汁に比べて料理としての格調が高いというか、「味には自信があります」という圧力を感じる。

 

次で最後だ。

5/5? たこめし

最後はたこめし。たこの食感が楽しい炊き込みご飯。たこを切らなければ食感が倍増してすごいことになるのでは?

 

1.米をとぎ、30分ほど水に浸してから水をきる。

 

2.たこを細かく切らずに入れる。

 

3.だし汁を加えて10分ほど蒸す。

 

~10分後~

 

4.器に盛り付けたら完成。

怖い。

 

さて、

五種類の料理が出そろったところで、味のランキングをつけたいと思います。

基準は完全に私の好みなので、その點はご了承ください。

 

見た目はよかったが味はいまいち。
煮る時間が短かったため大きな具に味が染み込んでおらず、味のない煮物を食べているような感覚だった。

しかし、味が染み込むまで長時間煮ると風味が消えて味噌汁のよさがなくなってしまうため、そもそも具材を切らずに味噌汁を作るというのは(料理の技術が高くない人間にとっては)不向きであるということが分かった。

ただし、味の染みやすい油揚げは食べ応えがあっておいしかったため、食材の選択しだいでは成功する可能性もあると思う。

 

 

ひとことで言うなら「麻婆豆腐味の焼き豆腐とハンバーグとネギ」
それなりにおいしいが、やや味が遠い

味噌汁同様、具材が大きい+煮込み時間が少ない? で味が染み込んでいないことが原因だろう。
さらに、麻婆豆腐のタレは辛さが味のメインなので塩分が少ない
ハンバーグのようなガッツのある料理を食べきるための、推進力になるような「しょっぱさ」が欠けているため、なかなか箸が進まなかった。

 

 

たこめしというより「たこ」と「めし」。たこをおかずにご飯を食べる感覚に近い。
では炊き込んだ意味がないかといえばそんなことはなく、ご飯にはたこの旨味が染み込んでいるし、たこにもだし汁が染みて、相乗効果が生まれている。獨立していながらコンビネーションを感じる

炊き込みご飯といえば、ご飯と具材を同時に食べられるのが魅力の一つだが、その反面、具材そのものをしっかりと味わえないという難點がある。
このたこめしは「たこをかじって噛みしめる」という作業を余儀なくされるため、必然的にたこの味をダイレクトに感じることになる。こういった形の炊き込みご飯があってもいいのではないかと思う。

 

 

第一印象は「かたい」
ただでさえ硬い胸肉をさらに焼きすぎたせいでとにかく硬い。最初は食べ辛さしか感じず「失敗か」と思った。
しかし、途中で変化が生じてきた。

食べ進めているうちに、なぜだか美味しさが加速度的に増していくのだ。どんどんおいしくなっていく。
おそらく、口が硬さに慣れて味に意識が行くようになったことと、そもそも胸肉が「噛むほどおいしい」ものだからだろう。

もも肉が「一口目から10のおいしさ」だとすると、胸肉は「6~7くらいのおいしさからはじまって、最終的に10のおいしさに到達する」ものだと思う。つまり、胸肉は長期戦向き。
長期戦の食べ方を強いられるこの調理方法は胸肉にぴったりだ。
一生懸命食べ続けながら、胸肉に閉じ込められた旨みをこじ開けていくスルメ的快感がある。

 

 

とてもおいしい
豚肉の油っぽさをトマトの酸味が中和し、トマトの酸味を玉ねぎの甘さがまろやかにする。三つの具材がバランスよく共存している。具材を切っていないため、ボリューム感と歯ごたえも感じられる。

これは何か似ている。
そうだ、ハンバーガーだ。
ハンバーガーの具とスパゲティを食べているようなものだ。
では、スパゲティとの相性はどうだ。

これがよく合っている。

「必ずしも一緒に食べなくてもいいが、一緒に食べるとより楽しい」という幸福な関係が築かれている。

以上、切らない料理のランキングでした。

まとめ

具材を切らないだけで、結構味が別物になって驚いた。
今度は逆に「切っちゃいけないものをめちゃくちゃ切る料理」に挑戦した。

肉じゃがとか天ぷらの具材をみじん切りにしたらどうなるんだろう。

 

(おしまい)