―都內 某會議室

 

「今日集まって頂いたのは他でもありません」

 

「我が社の慰安旅行を計畫したく思っております」

 

 

「慰安旅行……」

「ほほう」

「もうそんな時期ですか」

「まあ、あまり堅苦しくならず、ざっくばらんに立案して參りましょう」

 

 

 

「では、僭越ながら、議長」

溫泉はどうですかな?」

 

「溫泉で日々の疲れを癒やした後に、ビールをくぃ~~~、と」

 

「その後に、ほら、これ(麻雀)でもどうですかな? 盛り上がりますぞ~」

「原氏……」

 

 

「それいいねぇ~~~」

 

 

「議長、私からも一言付け加えさせて頂くなら」

 

ゴルフ場が近くにある溫泉地にするのはいかがですか?」

「溫泉の後にゴルフ。ゴルフの後にも溫泉。あ! なんなら2泊で?」

「山口氏……」

 

 

「ワタクシ、飛ばしちゃいますゾ~~~」

 

 

「加藤氏はどう思われますか?」

「おや、どうされたんですかな? 難しい顔をして」

「はて……」

 

 

「あっ、わかった!」

「加藤氏は、溫泉の宴會場にコンパニオンを呼ぶ準備はできとるのか、と言いたいんですよ!」

 

「なぁ~~んだ、そういうことか~」

「さすが抜かりないですなぁ、加藤氏は」

「ぐぐぐぐぐ……………」

 

「貴様ら…………」

 

「いい加減にしろ!!!」

 

 

 

 

 

「か、加藤氏…?!」

 

 

 

「いつもいつも、溫泉だ酒だ女だなんだと!!!!!!!」

「いっつもいっつもいっつもいっつもだ!!!!!」

 

 

「何も私はね、それを否定するわけじゃありませんよ!! ええ、否定するもんですか!! それに助けられた夜も何度もありましたもの!!!」

「ただね!!!! 慰安ってはたしてそれだけなんですかね?!! この世にそれだけ?!?! ねえ?!」

 

「ど、どうされたんですか、加藤氏?」

「いや、他にご希望のコースがあるなら、仰って頂ければ……」

 

「じゃあ言いますよ!!! ええ、言ってやりますとも!!!!」

「私はね!!! 子どもに戻って、ちょっとしたお金持ちの友達の家に遊びに行きたいんですよ!!!!!!

 

 

 

子どもに戻ってちょっとしたお金持ちの友達の家に遊びに行きたい……?

「無理なことだとお笑いなさい!!!!!! さあ、お笑いなさいよ!!!」

「もう一度あの気持ちを味わいたいんだ!!! それが私にとってのなによりの慰安ですよ!!」

 

「加藤氏……」

「気付けば、子どもを出迎える側の親の年齢になってしまいました……」

「それでも未だにこんな夢を抱いている、愚かな私めをお笑いなさい!!!!!」

 

 

「うぅぅぅぅ……」

 

 

 

 

 

「笑いやしませんよ」

 

「その夢、ともに葉えましょうぞ!」

 

 

 

 

 

 

「さて、ではみなさん。何をもってして、ちょっとお金持ちの友達の家となるのかディスカッション致しましょう」

「まずは一戸建てですな」

「ええ。それから、出てくるお菓子がブルボンかと」

「み…、みなさま……!」

 

 

~30分後~

 

「では、夕飯にハヤシライスをご馳走になる、ということで」

「異議なし!!」

「友達のプロフィールも練りたいですなぁ」

「練りましょうとも」

 

 

~1時間後~

 

「友達の名前は?」

「篠宮 政伸(しのみや まさのぶ)ですな」

「ノブくんの好きなものは?」

「野球と恐竜とミニ四駆ですな」

「好きな野球チームは?」

「お父さんに連れられて、ドジャースの試合を観に行ったことがあるので、それ以來ドジャースですな」

 

 

~2時間後~

 

「出ましたなぁ」

「ええ、出ました出ました」

 

「では、行きますか」

「ええ、參りましょう」

 

 

 

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